約束はできるだけしたくない
前にフランス家庭料理の居酒屋に行ったとき、そこで飲んでいたおっさんがその店の女将と、翌日映画を見に行く話をしていた。しかしおっさんは「これは約束ではない」と言う。なぜかというと、「当日になって気が向かなくなるかもしれないから、できるだけ約束はしないようにしている」というおっさんのこだわりがあるのだ。約束を守ることはすばらしいが、約束をしないこともまた素晴らしい。
俺も約束は結んだ瞬間に拘束力が発生するので好きじゃない。好きで約束するのに、約束するや否やそれが嫌になってしまうことさえある。何かが確定するということはそれだけ自由がなくなるということで、そのことがなんとなく熱意を冷めさせるんじゃないかと思う。男女関係についてもそうだし、物欲についても同じことが言えると思う。買い物をしていて楽しいのは、どれを買うか選んでいる時だ。選んでいるときが一番自由だから。