映画 風立ちぬ 感想

ゼロ戦を作った人の映画と聞いていたので、悲しい、悲惨な話なんだろうと思って観ていた。が、実際は戦争の悲惨さを描いた話、というよりは、主人公の堀越次郎の生き様を見せることに主眼を置いた映画だったように思う。「美しい飛行機を作りたい」という夢を(異常なまでに)ひたむきに追いかける主人公は、戦争に対しての関心は皆無のようだったし、戦争を直接的に描いたシーンも皆無だった気がする。そこがものすごく新鮮で衝撃的だった。戦時を描いた映画でありながら戦争が前面に出ていない。これは完全にわざとやっているとしか考えられないし、普通の人にはできない試みだと思う。

前面に出てこないとは言え戦争は主人公の人生を翻弄する。物語終盤、頑張って作り上げた美しい飛行機を全部破壊してしまうのだ。ここは序盤に主人公が見ていた、爆弾に撃ち落とされる夢と構図が重なる。夢はさめたが主人公の人生は続く。途方に暮れた様子の堀越氏。自分のテーマである美しい飛行機作りも終わってしまった。さてどうするか。生きねば。みたいな感じ。いろいろあったが結局ゼロに戻ってしまい、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか分からない結末だ。でもそういう結末がなぜか自分は好きだから良かった。

(映画の内容をすごく簡単に説明しているので軽い感じになっているが、実際は人、物、景色が丁寧に描かれていて、そのリアリティがあるからこそ、「生きねば」という単純なメッセージが重みをもって響いてくる、というのは付け加えておきたい)